「なんだか最近、社員の表情が暗い」
「離職率や採用の苦労がジワジワ増えている」
「制度や待遇は整えてきたのに、なぜか“会社の元気”が戻らない」
──そんな声をもつ経営者が、いま**“社員の健康”と“体づくり”に目を向け始めています。**
実際、福利厚生として「社内ジム」や「トレーニング環境」を整える企業は年々増加中。
その背景には、単なる健康対策にとどまらない組織変革の可能性があります。
本記事では、**「福利厚生 × ジム導入」**が、採用力・パフォーマンス・組織文化をどう変えるのか──
実例や設計ノウハウを交えて、導入の価値と方法を徹底解説します。
なぜいま福利厚生に「ジム」なのか?
● 社員の“メンタルと体力”が限界に近づいている
ここ数年、経営者の間でよく聞かれるのが次のような声です。
- 「離職率が高まってきた」
- 「若手社員の活力が続かない」
- 「メンタル不調や体調不良での欠勤が多い」
これらの問題に共通しているのは、「組織のパフォーマンスが目に見えない形で下がっている」という事実です。
実際、厚労省が発表した調査では、“仕事に必要なエネルギーが保てていない”と感じる社員の割合が、40代以下で年々増加しています。
リモートワーク・過労・長時間の座位など、身体的ストレスが積もる現代の働き方に対して、企業として“受け皿”を持っていない組織は、知らぬ間に離職と生産性低下のリスクを抱えています。
● 健康診断の実施だけでは“対策”にならない時代
多くの企業では、「健康経営」として年に一度の健康診断やストレスチェックを実施しています。
しかし、それだけでは何かあったときのチェックにすぎず、“変化を生み出す仕組み”にはなりません。
本質的な健康経営とは、社員の“日常”そのものを改善していくアプローチであるべきです。
その一つの具体的な答えが、今注目されている「福利厚生としてのジム導入」です。
● ジム導入がもたらす“3つの戦略的効果”
ジム設備やトレーニング環境を社内に導入することは、単なる運動習慣の促進にとどまりません。
それは以下のような複数の経営課題に同時に効果を発揮する「戦略的投資」なのです。
① 社員の生産性とモチベーション向上
- 運動習慣によって日中の集中力が向上し、会議の質や業務効率が改善される
- 疲労感が軽減され、イライラや意思決定のブレが減少
② 離職率の低下・メンタルヘルス対策
- 運動によって分泌されるセロトニンやドーパミンがストレス軽減に効果を発揮
- チーム内のコミュニケーション機会が増え、心理的安全性が高まる
③ 採用力・企業ブランディングの強化
- 「福利厚生にトレーニング環境あり」というだけでZ世代・20代人材からの評価が向上
- 社員紹介・SNS広報などでも**“健康意識の高い会社”としての見せ方がしやすくなる**
● 「福利厚生費」として、実は高コスパ
さらに見逃せないのが、福利厚生費としてのジム導入は税制優遇対象であるという点です。
多くのケースでは、社員利用目的であれば経費化できるため、
一般的な広告費や研修費よりも“実質負担が少ない割に満足度が高い”投資になります。
たとえば、スペース3坪・器具100〜150万円程度の初期導入でも、
5年スパンで考えれば1人あたり月額1,000円未満の福利厚生コストで済むことも珍しくありません。
企業にジムを導入すると、社員はどう変わるか?

「ジムを福利厚生で導入して、本当に意味があるのか?」
経営者として当然気になるポイントです。
この章では、実際にジムやトレーニング環境を取り入れた企業の社員がどのように変化したのか、
“身体的・心理的・組織的”な3つの視点から解説していきます。
● 1. 身体面の変化:見た目より「体力」と「日中の疲労感」が変わる
企業内ジムを利用し始めた社員が最も早く感じるのは、「疲れにくくなった」という体感の変化です。
特に多かった声は以下の通り:
- 「午後の会議での集中力が持続するようになった」
- 「1日の終わりに“まだ動ける”感覚がある」
- 「階段や移動の息切れがなくなった」
これらの背景にあるのは、軽い筋トレや有酸素運動による基礎代謝・体力の底上げ。
忙しいビジネスパーソンにとっては、見た目よりも**「働く体が戻ってくる」**ことが成果として大きく映ります。
▶ 社員が「疲れていない」状態で仕事に臨めることは、パフォーマンスの基礎体力そのものです。
● 2. 精神面の変化:モチベーションと“表情”が変わる
企業の人事責任者やマネージャーが最も驚く変化は「社員の表情と話し方が変わった」という点。
以下は、実際のフィードバックの一部です。
- 「なんとなく会話のトーンが明るくなった」
- 「出社時の挨拶が前よりはっきりしている」
- 「仕事のリズムにメリハリが出た」
これは、運動によって分泌されるセロトニンやエンドルフィンによる“脳の活性化”の影響です。
また、定期的な運動習慣によって、「自分を整えている」という自己肯定感が高まり、
内向きだった気持ちが前向きに変化していきます。
▶ トレーニングは“筋肉”ではなく“意識”を育てる。前向きなマインドは周囲に連鎖します。
● 3. 組織面の変化:コミュニケーションが自然に増える
福利厚生ジムは、部署を超えた自然な“コミュニケーションハブ”としても機能します。
以下のような光景が、導入企業で多く見られます:
- 運動中に気軽な会話が生まれ、上下関係にとらわれないつながりができる
- 「今日スクワット何回やりました?」など、雑談がチームビルディングの種になる
- 運動後の雑談が、仕事のアイデア出しや悩み相談のきっかけになる
つまり、業務上の“建前を外した人間関係”が育ちやすくなるのです。
これは、テレワークや分断化された組織にとっては大きな価値です。
経営者自身が変わる──“体を整える”ことが与える影響力
福利厚生としてジムを導入する際、多くの企業で変化の起点となるのは、実は「経営者自身」です。
会社の空気を一番変えるのは、制度でも設備でもなく、
「トップの姿勢と日常」そのもの。
ここでは、経営者がトレーニングや健康習慣に取り組むことで、どのように組織へ影響が波及するのかを、リアルな視点で解説していきます。
● トップの習慣が、組織の文化になる
ある企業の実例です。
40代の経営者が、会社の会議室の一角に小さなトレーニングスペースを設け、
「昼休みに15分だけ、自分も体を動かす」と宣言したところ、数ヶ月で社員の参加率が倍増。
次第に「社長がやってるなら、俺もやるか」と、自然に運動が社風として根付いていきました。
▶ 経営者の習慣は、“経営方針以上に伝わる言葉”になります。
● 見た目が変わると、言葉の説得力が変わる
トレーニングや健康習慣に取り組むことで、体型・姿勢・表情が整ってくると、
不思議なほど社内外からの評価が変わり始めます。
- スーツのシルエットがスマートになる
- 表情に活力が出る
- 姿勢が良く、背筋が通った印象になる
これらはすべて、ビジュアルとして“信頼の土台”になる要素です。
▶ 「数字は正しいが、なんとなく頼りない」
▶ 「話は上手だが、なぜか響かない」
そんな“違和感”は、見た目と体から滲み出るものです。
● 社員との距離が「健康」で縮まる
経営者が健康に目を向けていると、社員はこう感じます。
- 「自分の体も気にかけてくれている会社なんだ」
- 「この会社で長く働いても大丈夫そうだ」
- 「変わることが許される空気がある」
たとえば、昼休みに経営者が軽くストレッチしている姿、
歩いて帰る選択をしている姿──
それだけで、社員は“健康的で前向きな組織である”と感じ取るのです。
ジム設備の導入事例とROI(投資対効果)の可視化

「福利厚生でジムを導入する」と言っても、経営者として気になるのは、やはり“それが実際にどんな効果を生むのか”という点です。
この章では、中小企業3社のリアルな導入事例をもとに、
具体的な変化と、その“費用対効果”について整理していきます。
● 事例①:建築設計会社(社員30名・東京都)
▷ 導入背景
長時間デスクワークによる「腰痛・肩こり・離席率の増加」に悩んでいた。
福利厚生の一環として、社内の空きスペースに簡易ジムを設置。
▷ 導入内容
- ダンベル・バイク・ストレッチマットなど、初期設備費用:約80万円
- 休憩中の自由利用/週1回のトレーナー訪問(月5万円)
▷ 結果
- 平均離席時間が月20%減
- 肩こり・腰痛による早退や通院が約半分に
- 社内の「運動Slackチャンネル」が活発になり、チーム横断の会話が増加
▷ 経営者コメント
「医療費削減より、社員の表情が明るくなったことが一番の成果です」
● 事例②:ITスタートアップ(社員12名・渋谷区)
▷ 導入背景
急成長中で働きすぎ・夜型の社員が多く、体調不良・睡眠障害が課題に。
「心身のコンディション管理」を目的にミニマルな運動環境を用意。
▷ 導入内容
- オフィスの一角にパワーブロック(可変式ダンベル)・ストレッチスペース
- 社員が交代で「朝活トレーニング」を提案し合う仕組みを導入
▷ 結果
- 午前中の稼働率(Slackログイン率)が130%改善
- 年間有給取得率が前年比+22%(体調不良による取得が減少)
- 採用面接時に「福利厚生でトレーニング環境がある」と話題に
▷ 経営者コメント
「フィットネス環境が“スタートアップっぽさ”の象徴になった」
● 事例③:製造業(社員70名・埼玉県)
▷ 導入背景
ベテラン社員の健康維持と若手の定着率改善を目的に、福利厚生全体の見直しの一環として導入。
▷ 導入内容
- 会社倉庫の一角を改装し、スミスマシン・ランニングマシンを設置
- 「朝礼前ストレッチ」「昼の5分サーキット」「帰りの軽トレ」を推奨
▷ 結果
- 離職率が前年比6%改善(3名→1名)
- 若手社員の満足度アンケートで「職場環境に満足」が80%以上に
- 社員同士の“健康談義”が増え、飲み会が「筋トレ話」になる変化も
▷ 経営者コメント
「トレーニングの話題が、世代を超えた共通言語になった」
● ROIは“見えない成果”も含めて考える
ROI(投資対効果)という言葉を聞くと、
「生産性が何%上がったか」「医療費が何円下がったか」といった定量的評価を思い浮かべがちです。
しかし、福利厚生としてのジム導入では、
数字になりにくい“空気の変化”や“関係性の質”の改善が極めて重要です。
- 社員が自主的に「運動しよう」と言い出す文化
- 年齢や部署を超えて共通の話題が生まれる土壌
- 健康的な見た目が、外部からの企業評価を底上げすること
▶ これらは「企業らしさ」を構成する無形資産であり、数値には現れにくいながらも強力なブランディング要素となります。
最小コスト・最大効果で始める「福利厚生ジム導入の設計(業務用編)」

福利厚生として本格的なフィットネス空間を設けると聞くと、多くの経営者がまず不安に感じるのが「コスト」と「スペース」。
しかし実際には、適切な面積と機材構成を意識すれば、10〜15坪程度でも業務用ジムとして十分に機能します。
この章では、業務用機材を前提にした福利厚生ジムの設計ポイントを、空間・機材・予算・運用の各側面から具体的に解説します。
● 1. スペース設計:10坪(約33㎡)あれば快適に運用可能
本格的な社内ジムとして十分なクオリティを保ちながらも、省スペース設計は可能です。
一般的に、1人あたり2〜3㎡が快適に運動できる基準とされており、10坪前後でも3〜5名が同時利用可能な空間構成を作ることができます。
推奨ゾーニング例
ゾーン | 設備内容例 |
有酸素ゾーン | ランニングマシン2台、バイク系1台、換気・モニター設置など |
マシンゾーン | 上半身・下半身用の多関節トレーニングマシンを各2〜3種類配置 |
フリーウェイトゾーン | スミスマシン or パワーラック、ダンベル、ベンチ |
ストレッチエリア | マット、フォームローラー、姿勢改善器具、ミラーなど |
▶ 空間設計は“何を目的に整えるか”が最重要。単なるマシン配置ではなく、使用シーンから逆算することが鍵です。
● 2. 機材選定:操作性・安全性・耐久性を重視した“社員が続けられる設計”
業務用の機材を導入する最大のメリットは、誰でも安全に、効率よく体を動かせる環境をつくれることです。
また、複数人での同時使用や長時間稼働を想定した設計のため、故障も少なく、総コストを長期視点で見れば高コスパになります。
機材カテゴリと特徴(例)
カテゴリ | 機材例(ブランド非記載) | 特徴 |
有酸素マシン | ランニングマシン、エアロバイク、クロストレーナー | 連続使用でも騒音が少なく、関節に優しく、初心者〜上級者まで対応可能 |
筋力トレーニング機器 | 胸・背中・脚・腹部に特化したマシン(ケーブル式やウエイトスタック式) | 誰でも扱いやすく、誤操作が少ない。フォームが整いやすく効果が高い |
フリーウェイト系 | パワーラック、スミスマシン、ダンベルセット、フラットベンチ | 負荷調整が自在で、中上級者のトレーニングにも対応。汎用性が高くコスパ良し |
▶ 機材は“万人が安全に使えて、効果を感じられる設計”であることが何よりも大切です。
● 3. 初期導入コスト:1,000万円以内で“本格環境”が整う
高級感・機能性・耐久性を備えた業務用機材を揃えると、家庭用よりコストは上がります。
しかし、トレーナーや利用者が信頼して使い続けられる空間を提供するという意味では、それは投資価値の高い設計です。
モデルケース(延床50㎡、同時利用4〜6人想定)
内容 | 概算コスト(税別) |
ランニングマシン×2 | 約250万円(1台125万円前後) |
有酸素バイク×1 | 約50万円 |
多関節マシン(胸・背中・脚・腹)×4〜5台 | 約500万円 |
スミスマシン+フリーウェイトセット | 約150〜200万円 |
内装・床材・鏡・換気など | 約150万円 |
▶ 合計:約1000〜1,200万円で、信頼性の高い業務用ジムが導入可能です。
※ オプションでパーソナルトレーナー契約やオンラインセミナー導入も可能
● 4. 継続利用のための“運用デザイン”が要
機材導入だけでは文化は定着しません。
重要なのは、社員が自然と使いたくなる“空気設計”と、行動が可視化される仕掛けです。
実例に基づいた施策例
- 社内チャットに「整え部」チャンネルを作り、利用報告や体調記録を共有
- 社員ごとに簡単なトレーニングメニューを提示(QRコード連携)
- 昼休憩や夕方の「10分メニュー」など短時間ルールでの推奨
- 専門家の月1回のセミナーや動画配信を活用
▶ 運用に“余白”と“導線”を設けることで、無理なく定着し、文化が醸成されます。
◆ 設計ポイントまとめ(業務用・ブランド非表示版)
設計項目 | 要点・コメント |
スペース設計 | 約10〜15坪で同時に複数人が使用できる構成が可能 |
機材選定 | 安全・直感的・耐久性のあるマシンを優先。全社員に対応した汎用性を持たせる |
投資規模 | 1000〜1,200万円の範囲内で本格導入が可能。長期運用でコスト回収しやすい |
継続設計 | 見える化・共有・短時間ルール・Slack活用で“自然な習慣化”を促す |
経営・社風面 | 健康=会社の誠意と見られる時代。「文化」としてブランディング資産になる |
設備ではなく「社員に対する姿勢」が問われる時代。
整えられた空間は、組織への信頼・共感・継続意欲を育てる“見えない資産”です。
福利厚生ジムが“企業ブランディング”になる理由
福利厚生ジムの導入は、単に社員の健康促進の枠を超え、今や企業の「魅せ方」そのものに関わるようになっています。
ここでは、トレーニング空間を“企業の顔”に変えるための考え方と実例を、
採用・SNS活用・社風づくりの観点から解説します。
● 1. 採用競争に勝つ「職場環境」の見える化
特にZ世代・ミレニアル世代では、給与・職務内容と同等に「働く場所の雰囲気」を重視する傾向があります。
IndeedやWantedlyなどの採用ページでは、企業のジム・ラウンジ・リラックススペースなど、“生活感のある職場写真”のクリック率が平均2倍というデータも。
▶ 採用ページでジム環境を見せることで得られる効果:
- **「ちゃんと社員を見ている会社だな」**という印象を与える
- “ここで働く自分”をイメージしやすくなる(エントリー率向上)
- 健康意識の高い人材・アクティブな人材の応募が増加
● 2. SNS時代における“広報資産”になる
福利厚生ジムは、日々のちょっとした投稿が「自然な企業PR」に変わるツールでもあります。
実際によくある投稿例:
- 「今日のストレッチメニューをSlackで共有」
- 「社長のプッシュアップチャレンジ」
- 「新人研修の後に軽く有酸素トレ」
- 「雨の日はランニング代わりにオフィスジム活用中☁️」
▶ 写真1枚+軽いテキストで、企業の“温度感”が伝わる投稿に。
社内だけでなく、社外向けInstagram・note・YouTubeなどで「健康×職場」の発信が増えることで、企業イメージそのものを健康的・先進的に見せることができます。
● 3. “社風”は福利厚生から伝わる時代
給与や休日数は他社と大差がないなか、応募者・取引先が重視するのは「空気感」です。
そして、福利厚生の内容=その会社の価値観そのものと見なされるケースが増えています。
例:
福利厚生内容 | 社風として伝わるメッセージ |
トレーニングスペースあり | 「自分を整える習慣」を応援する会社 |
ストレッチタイムの導入 | 「余白や回復を大事にする」文化がある会社 |
健康セミナー+実践あり | 「表面的でなく、本質的なサポートをする」本気の福利厚生 |
▶ 制度は“意図”を持って設計することで、カルチャーそのものに昇華します。
● 4. リテンション(定着)にも影響する「身体的安全性」
メンタルヘルスに注目されがちですが、実は**“身体的な疲労”が離職理由になることも非常に多い**です。
福利厚生で体調管理がしやすい環境があると、
「この会社でなら長く働けそう」「体を壊さないように考えてくれている」といった**“身体的な安心感”**が生まれます。
これは、従業員の“定着率”を高める上で重要な要素になります。
◆ 企業ブランディング×ジム導入のポイントまとめ
活用分野 | 活かし方の例 |
採用広報 | 採用ページ・会社説明会・写真素材として“働くイメージ”を可視化できる |
SNS活用 | Instagramや社内SNSで“日常感のある社風”として自然な発信ができる |
定着率 | 体調管理・リフレッシュしやすい環境で「辞めづらい会社」になる |
社内コミュニケーション | 「一緒に整える」習慣が共通体験となり、文化を醸成しやすくなる |
トレーニングスペースは、設備以上に「企業の価値観」を語る“言葉のいらない名刺”になります。
企業文化として根づくかどうかは“設計と巻き込み”で決まる

福利厚生としてジムを導入する企業は増えてきましたが、半年以内に使われなくなるケースも少なくありません。
一方で、導入から3年以上たっても自発的なトレーニング文化が続く企業も存在します。
両者を分けるのは、設備やコストではなく、“文化として定着する設計”と“社員の巻き込み方”です。
● 成功する企業の共通点①:初動に「熱量の高い少人数チーム」を活用
最初から全社員に期待するのではなく、運動意識が高い3〜5名の社員を“パイロットユーザー”に設定。
彼らを軸に、利用ルール・メニュー設計・運用フローを作っていく企業が多く成功しています。
- Slackに「#フィットネス部屋」を作って、運動記録を投稿
- 社内報で「今月のボディメイクチャンピオン」を紹介
- 新人研修で“トレーニング体験”を必須にするなど、初期の仕掛けで流れをつくる
▶ まず小さく盛り上げることで、“やってもいい空気”を育てていくのが文化定着の鍵です。
● 成功する企業の共通点②:トップ自らが関わる
第3章でも触れましたが、経営者や管理職が「運動をしている」ことを見せることが
組織内の心理的ハードルを下げる最大の要因になります。
- 社長が「ランチ後に10分だけストレッチ」する
- 上司が「今日は脚の日です」と冗談を交えて雑談する
- 月初めに「今月の健康テーマ」を宣言する
▶ 「やっていいこと」ではなく、「みんなが自然にやってること」になった瞬間から、文化は根づきます。
● 成功する企業の共通点③:“見える仕組み”がある
例えば、以下のような継続の可視化がされている企業ほど、ジム運用が続いています。
仕組み | 効果 |
利用ログ記録(紙 or Slack) | モチベーション維持・継続者の可視化 |
ウェルネスランキング掲示 | 楽しく競える・会話のきっかけが生まれる |
週1の共通チャレンジ発表 | テーマがあると「今日は何やる?」の問いが生まれる |
小さな成果発表(ウエスト減・睡眠改善など) | 成果共有が他者への刺激になる=行動連鎖が起きる |
▶ 「なんとなく運動してる」から、「会社が応援してくれている場」へと意識が変わっていきます。
◆ “文化浸透に成功する企業”のチェックリスト
項目 | コメント |
経営者・管理職の巻き込みがある | 上から変わると下も自然に動く |
少人数からのスタートチームがある | 最初は3〜5人でOK。熱量重視 |
SNSや社内報などで「見える仕組み」がある | 運動の習慣が“可視化”されることが大事 |
利用者の変化を本人+他者が見てとれる機会がある | 褒められる・気づかれることで継続が定着する |
ジム導入は“制度”ではなく“空気づくり”──
健康を押し付けず、応援し合える場を整えることで、会社は確実に変わりはじめます。
まとめ──あなたの会社が今始めるべき3つのステップ

ここまでの章で見てきたように、福利厚生としてのジム導入は単なる健康施策ではありません。
むしろそれは、
「社員を大切にしているか」「会社としてどんな未来を描きたいか」
を問われる、企業カルチャーの投資です。
最終章では、いま企業として動き出すための“現実的で実行可能な3つのステップ”を提案します。
✅ STEP 1:まず「整える意味」を再定義する
導入する前に、まず社内で共有したいのが
「なぜうちの会社に、健康と運動の文化が必要なのか?」という問い。
この答えが明確になれば、
コストやスペースの課題よりも、“意味と意志”が先に立つ組織設計ができます。
例:
- パフォーマンスを下支えする“身体資本”を育てたい
- 組織の空気をもっと前向きで活発にしたい
- 離職やメンタル不調を未然に防ぐ環境を用意したい
▶ 「設備を置く」ではなく、「働き方の選択肢を広げる」という視点が鍵です。
✅ STEP 2:3坪・3人・30万円から“ミニスタート”
最も成功率が高い導入パターンは、「小さく始めて、大きく育てる」モデルです。
- 3坪の空間を活用(休憩室・空き会議室)
- **3人の“整えたい社員”**を起点にパイロット運用
- 30万円程度の軽量設備(ダンベル・マット・ストレッチ器具など)
この形ならば、初期費用・工数を抑えながらも
“文化づくりの実験”を安全に行うことができます。
▶ まずは「3ヶ月だけやってみる」という社内チャレンジからでも十分です。
✅ STEP 3:社内で“話題化する仕掛け”を設計する
形だけのジムは長続きしません。
そのためには、自然と話題になり、「またやろう」「今週は何する?」といった循環を作ることが大切です。
すぐにできる仕掛け例:
- SlackやLINE WORKSで「#整え部」チャンネルを作る
- 1人が「今週のストレッチ」を貼る“当番制”
- 小さな成果(肩こり改善・スーツのサイズダウン)を社内報で共有
- 経営者が「出張先で5分だけ運動してみた」投稿をする
▶ トレーニングを“義務”ではなく“自然な空気”に変えることが、最大の文化資産になります。
◆ 最後に:設備よりも、意思が企業を変える
要素 | 成功の鍵 |
スペース | 3坪あれば始められる。大事なのは“使いたくなる空気” |
コスト | 年間100万円未満でも十分。補助金や経費処理も可能 |
継続の仕掛け | チャット・当番・社内報など“見える設計”で自然に話題化 |
経営者の関与 | トップの姿勢が最大の社風メッセージになる |
ブランディング | 福利厚生は“企業の美学”を語る無言の名刺 |
ジム導入は設備投資ではなく、「信頼と文化を育てる土壌づくり」です。
あなたの会社が“信じられる場”であるために──
いまできる一歩から、整えていきましょう。